人気女優がタイムスリップ!? ~芸能界⇒島原⇒新選組~
沖田さんはさっきからニコニコしてるし、藤堂さんは叱られた子猫にみたいにしょげてるし。


完全になかったことになってる私の失敗。


一応私のここの女中、朝起きてから軽く三十分以上たっている。


だから、そろそろ朝ごはんを作り始めなきゃいけない訳で………


「土方さん、私そろそろ仕事があるのでお暇褪せていただきます。それじゃ!!」


女中の仕事を言い訳に、この場から逃げさせていただきます。


後ろから、藤堂さんの私を呼び止める声が聞こえるけど気にしない、気にしない。


「あっ、着替えてない………」


今の私の姿は、島原に居た頃身分が高いお客さんからもらった、寝間着にできるくらいの丁度いい着物をもらったのでそれを着てます。


町に住んでいる人は、襦袢(じゅばん)を着て寝ているって聞いたことがあるけど、男所帯の壬生浪士組では現代で言う下着同然の襦袢だけで寝るなんてできません。


だって、ほら………
沖田さんみたいに、急に部屋に入ってこられたらたまったもんじゃないし………


このまま女中の仕事してもいいんだけど………


「寝間着でウロウロするのはちょっと………」


というわけで、私の部屋に置いてきた着物に着替えに行きたいと思います。


いくら部屋が汚くったって、荷物を置く場所くらいはあるからね。


「急がないと、乙葉(おとは)ちゃんに怒られちゃう。」


ちなみに乙葉ちゃんていうのは、昨日の夕方に知り合ったここで働くもう一人の女中。


本当は今日まで休みなはずだったんだけど、昨日の夕方に用事が早く終わったとかで夕飯の準備を手伝ってくれて、そこで仲良くなった。


乙葉ちゃんは可愛くて、動物に例えるとまるでウサギ!!


キュートでパッチリ二重な瞳に、守ってあげたくなるような細いからだ!!


だから、そんな可愛い乙葉ちゃんを待たせるわけにはいかないんです!!


「乙葉ちゃん、今日も可愛いんだろうな~。」


最近独り言が多くなった私は、今日も可愛いんだろう乙葉ちゃんを思って部屋に着物を取りに行った。
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