本当の君を
「俊ー!!」
「うっせっ……」
俺の名前を叫んだのは後ろの席の田山優介。
「宿題と見せてっ!頼む!」
パンッ、と手を合わせ頼み込む優介。
だけど、いつもなので…タダとはいかせない。
「はぁー?」
「頼む!ジュース奢るから!」
「それに更にメロンパン付でな。」
「げっ!よし来た!」
「ん。」
おばちゃん特製メロンパン。1日30個の限定、焼きたて。それをゲットするのは中々難しい。ただでさえ購買はいつも戦場なんだから。
とか、分かってて優介に頼む俺、谷山俊はかなり性格が悪いのだろう。
いや、美味しすぎるメロンパンが悪い。…やっぱ俺が悪いか。
「はぁ〜…よくこんなの分かるわぁ」
「お前が馬鹿すぎなだけ。」
まぁ…基礎を少し応用するだけの問題だから普段授業は爆睡の優介には難しいのかもしれない。
やっぱ爆睡の優介が悪いかな。
とか、色々と考えを巡らせながら椅子に横向きに座り優介が必死に宿題を写すのを眺める。
___ガタン
その優介の隣に彼女は座った。
今日はいつもより5分遅いんだな、とか無意識に思う。
「おはよー!あっきー」
「おはよ。」
「あっきー機嫌悪い?」
「別に?眠いから。」
「あぁー」
あっきーと言われた女、中野秋。
朝はかなり無口。そして眠そう。
そこに福井夏希が"機嫌悪い?"等と言えば更に機嫌が悪そうだ。
勘違いされ、不服なんだろう。眉間に皺が寄ってるのを前髪でうまくカバーしてあるから何とも言えないというか……
まぁ、福井は全く気付いてないようだけど。
そこに先生が来たから俺は前向きに座り直し、本を取り出した。
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