私は知っている





私と秋成さんが出会ったのは、激しい雪が降っている日のことでした。
ここ1番の冷え込みになるのでは…と言われていた日のことです。


秋成さんと出会ったとき、私はパン屋さんでアルバイトをしていました。
たまたま近くで交通事故が起こり、聞き込みに来た警察官が秋成さんだったのです。


それから秋成さんは毎日のようにパン屋さんへ足を運んでくれました。

シンシンと降り積もる雪の日も、突き刺さるような酷い雨の日も、太陽が焼けるように照りつく晴れの日も。



「いらっしゃいませ。いつも来て下さってありがとうございます」


「……ああ」



そんな他愛もない話しかした記憶がないけれど、それでも私はその一時が楽しかったのです。

基本無口で不愛想、自分の感情が表に出ない不器用な人ですが、私は知っているのです。
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