風の詩ーー君に届け
ペースメーカーやICDという重い響きが、不安だった。



自力で自分の心臓が、まともに脈を刻まない。

それを機械で制御し正常にする事実を受け入れられなかった。




薬で対処できるなら、多少薬の量や種類が増え、強めの薬になってもいいからと拒み続けていた。




塩分制限、糖分制限の味気ない食事には幼い頃から慣れていて、たいして苦痛はない。



水分制限が辛い。



夏に向かい、少しずつ暑くなり始め水分補給ができなくて……。



人混みや電車、バスなど公共機関の利用が、たまらなく不安だった。



Nフィルの練習、音合わせのたび曲を弾き通せるか。



1曲弾き終わるごと、呼吸を確かめた。



演奏中に息苦しくなるたび、目眩がするたび、まともに弾けているかどうか――。



不安でたまらなかった。
< 100 / 372 >

この作品をシェア

pagetop