風の詩ーー君に届け
ドイツ語で捲し立てるマエストロの怒鳴り声。



どこか遠くで聞こえているようで半分以上、何を怒鳴っているのか理解できなかった。




1人、怒鳴られ叱責されているのを自分たちは関係ないと、傍観しているようにしか見えないオケのメンバー。




彼らには、マエストロが捲し立てる全てを 僕が理解している――そう思われていることが、僕には都合が良かった。


体が弱いと思われても、心臓が悪いと知られたくはなかった。


――バカだと思う。


がむしゃらに頑張っているとか、努力している。


そう思われたり、言われたくはなかった。


いや「一生懸命頑張って、あの程度か」と自分自身、認めるのが怖かった。

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