風の詩ーー君に届け
詩月は心臓に先天性の奇形を抱えている。


運悪く見つかり、追いかけられたり囲まれたりすると、振り切って逃げることができない。


忍者や魔法使いのように自由に姿を変えたり、消せたりできたらと、たびたび思う。


が、街頭演奏の聴衆やコンサートの客入りは上々だ。


詩月はリスクのないラッキーなんてないと、実感している。




相変わらず、公共の交通機関を利用するのは苦手だが、移動手段として利用しないわけにもいかず、観念しプリペイドカードを購入した。



学生証、保険証、診察券の他に常備薬と携帯用の酸素を必ず入れて出掛ける。




バス、電車などを利用する時には、非常口間近の席に着き、がら空きや満員バス、電車には極力乗らないようにしている。


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