風の詩ーー君に届け
詩月がNフィルの練習に顔を出すと、妹尾がツカツカとハイヒールを鳴らして近寄り開口一番、こう言った。



「あなたってトラブルメーカーね。

撮られるんだったら、ちゃんとメイクをしておくんだった」



「じゅうぶん、綺麗に映ってましたよ」


観ていないはずはないよなと詩月は思い、何食わぬ顔で応える。



「暢気ね。再生回数、知らないの?」



「興味ない。

自分の動画なんて何回も見てたら、気色悪いヤツでしょ」



「あなた、喋るとイメージが崩れるわ」



「だから、どんなイメージを……」



「見た目の頼りないオルフェウスだな」



横からコンマスの如月が口を出す。



「はあ? 竪琴なんて弾けないけど」



「容姿が目立つんだから、派手なパフォーマンスは慎めよ」




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