風の詩ーー君に届け
如月がニコニコしながら詩月の肩を抱き、耳元で囁く。



「とくに人前で、はだけたりするなよ」



「……如月さん、近いですよ」



「何だ、ノーマルなんだ」



「は?」



「いや、浮いた話も噂も全く聞かないから……もしかしたらアッチ系かと。

それに、あんな顔もするんだな」



「えっ!?」



「妹尾とのデュエット、すげぇ色っぽい顔で弾いてた。

オケでは1度もあんな顔をしたことがないくせに」




あ……。


詩月は言われて、いつも気を張りミスをしないよう、完璧に弾こうとばかりして楽しむ余裕がなかったことに気づいた。


口では『音楽は音を楽しむ』と言いながら、楽しめていなかったなと。



「お前に、あんな悩ましげな顔をさせて……もっと楽しそうな顔をさせてやれるようなオケにしたいなって……うわっ、恥ずかしいこと言わせるな」


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