風の詩ーー君に届け
受験の実技試験。


もし、失敗すれば不合格になる……ことを承知の上で弾いた難曲、「ラ・カンパネラ」パガニーニによる超絶技巧練習曲No.3変イ短調だった。



母親にもピアノの師匠にも、無謀な挑戦だと反対された。


が、実技試験にこの曲を演奏する強気な姿勢と自信が、どこまで通用するのかを見極めたい気持ちが、詩月を駆り立てさせた。




たかが、音大志望の高校生に弾きこなせる曲ではない。

とても弾ききれるとは思えない。

散々言われた。


が、詩月は最初から最後までミスなく弾き通し、学費全額免除特待生を勝ち取った。



「親の七光り」と言う色眼鏡を払拭させたかった。



父親のコレクションに「ラ·カンパネラ」パガニーニによる超絶技巧練習曲No.3変イ短調があったことも、詩月には偶然とは思えなかった。
< 170 / 372 >

この作品をシェア

pagetop