風の詩ーー君に届け
―――「満天の星空の下で聴きたい曲があるの。

ホルストの『Jupiter』」



「……緒方」




詩月は郁子が病室で、瞳を輝かせながら話したのを思い出す。



――でしゃばりすぎ

酷いことを言った。



詩月は昼間の会話を思い返す。



頭を冷やすのは緒方ではなく、僕の方だ。




昨日から面と向かって、週刊誌の記事を広げて見せたり、画像を突きつけたりされたことが、詩月は悔しかった。



緒方にだけは、病状も胸の傷痕も知られたくはなかった。




――街頭で、胸をはだけたこと……あれはやり過ぎだった。


咄嗟にしたことではない。

ちゃんと考えてしたことだ。


後先を考えず行動するほどバカではない――。




あんな言葉がさらり、言えたことに詩月自身、驚いている。


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