風の詩ーー君に届け
それが当たり前の世界に足を踏み入れ、野次や中傷批判を受けながら、自身の個性や感性を埋没させたくはないと抗っている。




僅かな暇を見つけては、街頭演奏に出かけたり、カフェ・モルダウで演奏したりする。




先日、レッドツェッペリンの「天国への階段」を弾いた日は、懐かしい顔に会った。




街頭演奏を始めて間もない頃、歓楽街で出会った男性。



慌ただしい喧騒を避け、路地裏へと身を潜めた男性の目が、無言で何かを訴えていた。



くるり踵を返し男性に背を向ける。



拙いながらも、咄嗟に弾いたのが、レッドツェッペリンの「天国への階段」だった。




演奏を終え、人垣が引くと男性は苦通に顔を歪めながら、微かに笑みを浮かべ、名を訊ねた。



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