風の詩ーー君に届け
詩月自身の演奏と父親の演奏の狭間で、どれほど悩み苦しみ傷つき葛藤してきたかを理久は知っている。



感情を押し殺し、笑顔を失い絶望し、一時は演奏家を諦めようとした詩月。



理久は詩月が大学付属高校、聖諒に転校してきた頃を振り返る。



米国の作家、M・ミッチェル原作の映画「風と共に去りぬ」ラストシーン。


主人公スカーレットが呟く有名な台詞『Tomorrow is the another day』を顔色ひとつ変えず、「希望は絶望から生まれる」と訳すほど、詩月の心は荒んでいた。



極度の自信喪失とストレスは自律神経失調寸前まで、詩月を追い込み、詩月は鬱気味にもなった。



先天性心臓疾患をかかえた体は、留学も手術もできないほど、心身ともに衰弱していた。




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