風の詩ーー君に届け
その男性が目の前にいる不思議。




「……大二郎さん」



思わず声が漏れた。




「まだ危ない橋を渡られて?」



「いや、今は……。

ポスター……よく写ってるな」




男性はポスターを見ながら言う。




話題を変えるように……。




「よろしければ聴きにいらしてください。

チケットをプレゼントします」




「……見違えた。

あの時の顔とは違うな。

楽しみだ」




「5年も経ちますね。

もう1曲弾いていいですか?」




黒塗りのスタンウェイに座った白猫をちらと見て、訊ねた。




「ほぉ? 自信ありげだな」



「はい、僕の十八番です」



スッと背筋を伸ばし、ヴァイオリンを構える。



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