風の詩ーー君に届け
「あの曲を……思いつめたように。

マスターから詩月が5年前に、どういう状態だったか……を聞いて、感じた。


自分の思い、弱さ――そういった物、心の奥底にあるもの全てを断ち切ろうとしたのではないか?」



理久はハッとし、大二郎に訊ねる。


「ローレライも?」



「巷で、母と呼ばれている占い師『梅サクラ』は俺の旧友なんだが、彼女から聞いた話だ。

詩月は音楽関係、芸能関係の1部で『ローレライ』と呼ばれているらしい」



「どういう……!?」



「ローレライの演奏を聴いた者は、その音色に圧倒され自身の演奏ができなくなり、演奏家として破滅する、演奏家としての生命を断たれる―――と言われる。


ローレライの裏の意味は……『舞台荒し』、あるいは『演奏家潰し』の異名らしい」




< 211 / 372 >

この作品をシェア

pagetop