風の詩ーー君に届け
「必須科目が結構多いなって……大学って、もっと楽なんだと思ってましたが」


「まあな……理久から落ち込んでいるって聞いたけど、大丈夫そうだな」



「理久が……」



「ちょっと、妬けるくらい心配してた」



「あの画像の様子だと、心配しないほうがおかしいわよ」


郁子が詩月にメモを返しながら、同意を求めるように言う。



昨日の電車内でのアクシデントが詩月の脳裏を過る。


郁子とわかれた後、自宅近くのクリーニング店に寄り、シャツを預けたが詩月は恥ずかしくて仕方なかった。



「イヤなことを思い出させるなよ」


体が火照るのを感じ、詩月はポツリ呟き、安坂を見る。


「ん……顔が紅いけど、どうかした?」



「いえ、何も……」


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