風の詩ーー君に届け
詩月はドキドキしながらこたえる。



「クリーニングには出した?」



郁子が追い討ちをかけるように言う。


メニューに手を伸ばした手が震える。



「クリーニングって!?」



安坂がニコニコしながら訊ねる。



「電車の中で体制を崩して……」



「うわっ、緒方!?……」



詩月は慌てて郁子を遮る。


「なるほど」


安坂は全てを察したように、ゆっくりと口角を上げた。



「何焦ってるの? シャツに口」



「あーっ、緒方。連弾しないか?」


郁子の言葉を遮り、咄嗟に出てきた言葉。

詩月自身驚く。



「連弾!? いいわね」



郁子に言われホッとし、チラと安坂を見る。


どっしりと構えた余裕の笑顔に、苛つきながら詩月は席を立つ。

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