風の詩ーー君に届け
クラシックは、堅苦しくて面白みがないという思いこみを払拭させてしまうほど、繊細に作曲された曲だ。




詩月がそんなことを考えながら、男神像を見上げていると、安坂が「どうした?」と声をかけた。




「まさか、ヴァイオリンロマンスをネタに、あんな騒動に巻き込まれるとは思わなかったな。ガダニーニが無事でよかった」



「そうですね。
梅サクラさんのおまじないが効いたのかな」



「そうかもな」



詩月が無傷だったヴァイオリンを染々と見つめる。




「安坂さんは、ヴァイオリンロマンスを信じますか?」



ふいに詩月が尋ねる。




「そうだな……。信じてみたいな」



「意外だな、安坂さんは現実主義者だと思っていましたが、存外ロマンチストなんですね」


< 27 / 372 >

この作品をシェア

pagetop