風の詩ーー君に届け
14章/七夕
夜空を見ながら大音量で聴きたい曲がある。



詩月は郁子と病室で語ったのを思い浮かべる。



「ホルストの『Jupiter』二胡で聴くと最高なの」

と悪戯っぽく笑った郁子の顔がちらつく。



昨日。

メールで港みらいホールのインフォメーション前に18時、そう約束をした。


詩月はNフィルの練習を終え、アイドルグループXceon(エクシオン)のコンサートに向かう。



Xceon(エクシオン)メンバーの差し入れに買ったのは、理久のバイト先向かいにある洋菓子店自慢の甘さ控えめシュークリーム。



旧マネージャーから託された「Jupiter」の楽譜を確認しつつ、電車に揺られる。




初心者同然のXceon(エクシオン)メンバーが金管楽器で、果たして何処まで弾けるか定かではない。



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