風の詩ーー君に届け
郁子の顔が浮かんでは消え、消えては浮かぶ。




「満天の星空の下で聴きたい曲があるの。

ホルストの『Jupiter』」


みなとみらいホール、七夕のXceon(エクシオン)コンサートに「Jupiter」を弾く。



緒方に向けて弾く曲。
緒方に聴かせる曲
緒方に贈る曲。

――カデンツに似ている。


詩月は偶然ではないよなと思う。



17時半。

郁子との約束の時間に30分も前にホールにつき、詩月はXceon(エクシオン)の控え室に向かう。



本番前、緊張した顔をしたXceon(エクシオン)のメンバーは、詩月の顔を見るなり笑顔で駆け寄る。



その後ろで新マネージャーが、険しい顔で詩月を睨んでいる。



「初めまして、周桜詩月です。

Xceon(エクシオン)のメンバーにはお世話になっています」


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