風の詩ーー君に届け
「あの……舞台に上がれば関係ないでしょう。

どんな条件だろうと、本気で演奏するのは当たり前だと思います」



マネージャーの顔が凍り付き、詩月を険しい顔で睨み付ける。



「聴き手がいるかぎり、手は抜かない。

手加減など初めからするつもりはありませんし、相手が素人だろうとアイドルだろうと関係ないと思います」



「……『ローレライ』か」


マネージャーはポツリ呟き、「わかった」と席を立った。



「詩月さん、舞台から合図するから」



「宜しくな」



「差し入れ、ありがとう」


先日。

旧マネージャーの前で、嗚咽していたメンバーとは思えないなと、詩月は思う。



あの旧マネージャーの言葉「誰よりも輝け」が、彼らを成長させた。


真剣な思い、真剣な言葉は、ちゃんと伝わり相手に響く。

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