風の詩ーー君に届け
開演のブザーと共に、幕が開く。


スポットライトを浴びたXceon(エクシオン)の登場。
凄まじい歓声が上がる。


耳がどうかなりそうな声援の嵐に、詩月は耳を塞ぐ。



クラシックのスタンディングオベーションとは違う迫力。


ポスターが剥がされたり、追っかけや出待ちが騒いでいる光景に、幾度か遭遇したことを思い出し、詩月はテンションが下がるのを感じた。



終始止まない歓声に戸惑いつつも、プログラムは進んでいく。



詩月は隣りに座る郁子の顔をちらと見て、楽しんでいる様子に安堵する。



Xceon(エクシオン)とCM共演しなければ、アイドルグループのコンサート観賞なんて縁もなかったし、郁子を誘って来ることもなかったと思う。



郁子がアイドルに興味があるなど、詩月は思いもしなかった。
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