風の詩ーー君に届け
Xceon(エクシオン)の歌とダンスと衣装の早変わりに、客席の声援も大きくなる。



声援と応援に、比例するように会場の熱気が増していく。



客席全体が、Xceon(エクシオン)に合わせ立ち上がり手拍子をしたり、掛け声を掛けたり盛り上がり、歓喜している。



詩月は静かに、彼らを見つめている。


詩月に付き合うように、郁子も整然と鑑賞している。



「緒方……声援なり歓声なり、好きに上げていい」


郁子の耳元で言う。


詩月は歓声や声援で、声を張上げることなどした記憶がない。


そもそも、詩月はクラシックのコンサートか美術館で絵画や書の鑑賞や個展、博物館くらいしか行かない。



スポーツ観戦は学校の授業以外、皆無だし体育は見学ばかりだった。


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