風の詩ーー君に届け
留学を決め、様々な手続きをしながら、医師からの厳しい留学条件を満たすために、ずいぶん手を煩わせた。


父や、お世話になる師匠のお宅と、何度も連絡を取り合い、話をしていた。



前の師匠リリィの思いが宿るヴァイオリン「グルネリ」も先日、保険をかけ頑丈に梱包し空輸した。



「詩月さん、頑張ってね。応援してるから」



「ん……そっちもな」



「彼女にはちゃんと、マメに連絡とるんだよ」



「……遥、チャラいな、大丈夫だよ。詩月さんは」



空がコツンと遥の頭を鳴らす。



OFF日なのに駆けつけたXceon(エクシオン)のメンバーは、旧マネージャーからの手紙を託かってきたと手渡された。



飛行機の中で、ゆっくり読もうと思う。



安坂さんの横で、緒方はしおらしく黙ったまま俯いている。



「郁。ほら、ちゃんと挨拶くらいして」


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