風の詩ーー君に届け
「……つっ」



脇腹を押さえている、その手の部分が滲むように赤く染まっていた。


深く……息をつく。


冷静になろうと目を閉じかけた俺は、差し込む街の光がさえぎられていることに気づいた。


通りすがりか、少年が肩に楽器のケースを担ぎ、ただ、じっとこちらを見つめていた。


俺の脳裏に、愚かな選択が横切った。


と、少年は徐に楽器ケースから楽器を取り出し、路地の入り口で俺に背を向けた。



美しい旋律が奏でられる。


レッドツェッペリンだと!?

Stairway to Heaven 『天国への階段』……。

しかも……こいつはヴァイオリン!!



その音色に誘われ、人が垣を作り始めた。


その後ろを、無粋な雑音が慌ただしく通り過ぎ、消えていった。

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