風の詩ーー君に届け
「いくら音合わせをしようが、何度練習しようが最高の演奏なんてできない。
そのくらい、お前はとっくにわかってるんだろう!?」




詩月の顔が強張る。

喉が詰まり声が出ない。

理久の顔から目が離せない。



胸が熱くなり、こめかみに冷たいものが滲む。



ヴァイオリンケースを握りしめた詩月の指が、微かに震えている。




「詩月!?」



何かを言わなければ……と思うのに言葉が出ない。




詩月は理久の言葉が胸に突き刺さった刺のように、何かを言おうとすると捩じ込まれ食い込んでいく気がし、ヴァイオリンケースごと胸に手を押しあてる。




悔しさと虚しさと申し訳なさが込み上げて、目頭が熱くなる。




詩月は零れ出しそうな涙を堪える。


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