風の詩ーー君に届け
5章/詩月というヴァイオリニスト
音楽は心――。
師匠リリィが10年間もの歳月、詩月に繰り返し教えた言葉。
――音楽は楽譜を読んだり、作曲者の背景や心情を汲み取り、曲の解釈をして……。
弾き始める準備をするまでは理詰めだけれど、曲を奏でるのは貴方の心。
どんなに凄い演奏家でも、どんなに技術があっても、演奏するのは心なの。
心で弾きなさい。
貴方の心を磨きなさい――
Nフィル練習ホールの扉を開け、詩月はヴァイオリンケースをしっかりと胸に抱えた。
頼りなげに立っている詩月の体を理久の腕が、しっかりと支えている。
熱で火照った細く華奢な体は、息をつくたび肩が忙しく動く。
「何だ、間に合ったの」
舌打ちをする、派手な風貌をした女性の言葉が静けさを割って響いた。
詩月を支える理久の手に力がこもる。
師匠リリィが10年間もの歳月、詩月に繰り返し教えた言葉。
――音楽は楽譜を読んだり、作曲者の背景や心情を汲み取り、曲の解釈をして……。
弾き始める準備をするまでは理詰めだけれど、曲を奏でるのは貴方の心。
どんなに凄い演奏家でも、どんなに技術があっても、演奏するのは心なの。
心で弾きなさい。
貴方の心を磨きなさい――
Nフィル練習ホールの扉を開け、詩月はヴァイオリンケースをしっかりと胸に抱えた。
頼りなげに立っている詩月の体を理久の腕が、しっかりと支えている。
熱で火照った細く華奢な体は、息をつくたび肩が忙しく動く。
「何だ、間に合ったの」
舌打ちをする、派手な風貌をした女性の言葉が静けさを割って響いた。
詩月を支える理久の手に力がこもる。