風の詩ーー君に届け
「詩月は……コンピューターでも最新式の記憶マシーンでもない。

あいつはあんた達と同じ人間だ」




理久が思い切り叫ぶ。





詩月は、その叫び声にすら振り返らない。




ピクリとも動かず、妹尾の演奏に集中している。




何十人ものメンバー、様々な楽器で構成されたオーケストラ。




理久は、ぐるりとメンバーを見回す。




どの顔も全てのメンバーが、妹尾と詩月を見つめながら他人事のように談笑しているかに見える。




こいつら、みんな傍観者だ


詩月は完璧にAwayじゃないか




「この曲、何分あるんですか?」




「んっと……『第4楽章木星』と『第7楽章海王星』だから確か15分弱かな」




「……15分――」



愕然とする。



集中力が切れないのか?




詩月の後ろ姿から目が離せない。


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