風の詩ーー君に届け
苦笑で顔を歪め、男性が話す。




「震えが止まらなかった。

こんなヤツがいるのかって、場が凍りついた。

誰もが言葉を失っていた……


弾いたのは――ホルストの『惑星――Jupiter』だ。

コンサートのメインに弾く曲だった」





Jupiter――。


巷では化粧品会社のCMが話題になり、春先には売り出し中だったアイドルグループが、ヒットチャートのトップ10入りをしている。



原曲を吹奏楽とのアンサンブルにアレンジした、軽快な「Jupiter」―――。




そのヴァイオリン演奏をし、アイドルグループのセンターに映っている詩月を理久は思い浮かべた。




CMが流れるたび、俯き翳る詩月の表情を――。




「彼への苛めは、その直後から始まった。

その前まで、誰もがいつ彼女のターゲットにされるか……

怯えていたんだ」




理久は息を呑む。



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