風の詩ーー君に届け
詩月が苛めの対象になっている間、自分たちは安全だ




そう聞こえる。




「彼女が彼に、時間変更や場所変更のガセメールをたびたび送ってるのも知ってる。

でも彼は、いつも平然と時間通りに現れる。

1度も練習を休まないし遅れたこともない。

いくら彼女が楽譜に細工しても、楽譜を隠しても、楽譜を本番寸前で渡してさえも動じない。

何事もないように、完璧に弾きこなす。

それどころか半年以上も苛めに合いながら、その輝きを失わない。

いや更に、輝きを増している。

苛めは当初より辛辣になってるのに……不思議でならない」




詩月と妹尾の様子から目を離さず、淡々と語る。




「彼がオケに入って、オケが変わった。

活気づいた。いい演奏をしよう。

彼のソロに応えて最善を尽くそうって、メンバーの意識が以前とは比べものにならないほど高揚した」




さらに続ける。


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