風の詩ーー君に届け
「あ……ポスターのアイドルグループなんだが」




「本当!? Xceon(エクシオン)観たいと思ってたの」




「そう、……なのか」





「あなたと共演してるアイドルグループですもの」



はにかんだ笑顔、緒方の頬が微かに染まっていた。



照れ臭くなって胸が逸り、窓ガラス越しに外を見る。




「本降りになりそうだな」



「大丈夫。急げば、そう濡れない」







小雨の中。


傘を差し鞄を濡らさないように抱え込み、小走りに帰っていく緒方の後ろ姿を思い浮かべた。


Nフィル音合わせの後。
ホール出口で叫んだ後の記憶がない。


理久の呼んだ救急車で、病院に担ぎこまれたと聞いた。


春休みに3泊の検査入院をした時、主治医に言われていたことがある。


「貧血や発作が頻繁に起こるようなら、ペーシング治療(植え込み式除細動器(ICD)やペースメーカー植え込みをすること)を考えている」と。


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