恋の逃避行は傲慢王子と

 そんな時、アビーはクローイの恥だと思っている、父親に責められ、落ち込む原因を無理に聞き出そうともせず、口を閉ざしたまま、ただずっと自分の傍らに寄り添ってくれるのだ。

 そのおかげでどれだけ気分が落ち着いたことか……。

 そのおかげで、どれだけ自分の心を傷つけずにいたか。



 アビー・パーラーは人を思いやる気持ちを持った、とても心優しい女性なのだ。



「ええ、二言はないわ!! その代わり、貴方は変わるのよ! これから今まで被ってきた殻を破り、自分の言いたいことや、やりたいことをするの。こんな生活がいやだと思うのなら、ね。これは貴方が生まれ変わることのできる、とてもいいきっかけなのよ! いいわね?」



『生まれ変わる』



 クローイがそう言ったのは、アビーはけっして、『何も出来ない娘』でも、『でくのぼう』でもないからだ。


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