恋の逃避行は傲慢王子と

一本の電話。

(一)




「も、もういや! わたし、ここから逃げたい!!」

 アビー・パーラーは、はじめの言葉を連続して繰り返し、電話越しでヒステリックに話した。



 電話の相手は、アビーの親友で、コネリー財閥の大資本家のお嬢様。クローイ・コネリーだ。



 アビーもお嬢様には変わりないが、アビーの場合、クローイのような大資本家などではなく、モーター会社の社長を父にもつ、いわゆる社長令嬢だった。


 クローイとアビーは同じ年齢で、女性同士。しかも、ひとり娘と立場は同じだということもあり、ふたりはすぐに打ち解け、親友とも呼べる仲になった。


 そして、アビーにとって、クローイはとても頼りがいがある。時には姉のように、自分を励ましてくれる女性でもあった。

 だから実の両親よりも彼女に心を開き、胸の内を打ち明けることが多い。ことさら、今に至っても――。


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