カットハウスやわた
新しい私
月曜日の朝、出勤してすぐに辞表を出した。セクハラ上司は通さず、直接、支店長に手渡した。


「綴喜さんのような優秀な営業マンが突然、辞めるなんて……もう一度、考え直してくれないかな?」


支店長や、同僚には申し訳ないけれど、私の意思は堅かった。


「もう明日からきません。今までお世話になりました」


私は、支店長の説得にも応じず、さっさと自分のデスクを片付け始めた。そして逃げるようにして、職場を後にした。


荷物片手にオフィス街を歩くと、清々しい気分になった。


「あー!スッキリした!」


空を仰いで、そう言った。行き交う人たちの視線も気にならなかった。


残された同僚たちには、引き継ぎの資料と、この近くで評判の洋菓子店の焼き菓子を添えて、今日の午前中着で職場に送っておいた。


飛ぶ鳥跡を濁さず……である。



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