カットハウスやわた
星になれたら
「ああ!コレ……ね」


八幡さんは、薬指の指輪に触れながら苦笑いをした。


「いつまでも未練たらしくつけているから、勘違いしちゃうよね」


離婚、したのかな?おかしなこと、聞いちゃったな……。なんとなく気まずくて、慌ててコーヒーをすすった。コーヒーが持つ独特の甘い香りは、こんな気まずいシーンでも、心を和ませてくれるおいしさがあった。


「今は、いない。星になったから」


別れたくて、別れたんじゃないんだ……。


「……ごめんなさい……」


「いやいや、あなたが謝ることじゃないですよ。仕方のない、ことです」


八幡さんもなんとなく気まずいのか、慌ててコーヒーカップに手をかけた。


「左利き、なんです」


私の視線に気づいたのか、気まずい空気を一掃するためなのか、八幡さんが言った。


「カットも左手?」


「もちろん。よかったら、お切りしますよ?」


「でも今日は、定休日じゃないですか?またの機会でいいです」


「そうですか…残念だなぁ」


なにが残念なんだろう?そう思いながら、クッキーを口にした。お母さんの手作りクッキーのような優しい甘さが、口いっぱいに広がった。



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