カットハウスやわた
「綺麗な髪、ですね」


鏡に映る笑顔の八幡さんにつられて、私まで笑顔になった。


「ありがとうございました」


八幡さんは、床に散らばった髪をほうきで丁寧に集めていた。


「仕事は、辞められましたか?」


「ええ。今朝、辞表を……」


「これから、どうなさるおつもりですか?」


「さぁ……勢いで辞めたから、私にもわかりません」


「次の仕事がみつかるまで、もしよければ、うちで働きませんか?」


八幡さんは、相変わらず床を掃除しながら言った。


「うちの雑用を手伝ってもらえると、すごく助かります」


「でも……」


「セクハラ男や、浮気男がいる街なんて捨てればいい」


掃除の手を止めて、八幡さんが私の顔を覗きこんだ。


「忘れるために髪を切ろうとするよりは、ずっといいですよ」


大きくて綺麗な目で真っ直ぐにみつめられると……NOとは言えなかった。





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