カットハウスやわた
翌日。
十一時の約束で、再度、熊野不動産を訪れた。


「いらっしゃいませ」


受付の女性が、にこやかに迎えてくれた。不動産屋……というよりは、居酒屋の女将さんのような、ふくよかな女性だ。


「あの……綴喜と申しますが……」


私が口を開くと、奥から熊野さんが姿をみせた。


「綴喜さま、いらっしゃいませ。お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ」


「あ、はい。どうも……」


軽く会釈をして、店の奥に入った。
契約書にサインをして、鍵を受け取る。


「それと……これは、私からのサービスなのですが……」


熊野さんはそう言うと、急に体を縮こませて、小さな声で言った。


「引越業者を手配いたします」


「そこまでやっていただけるのですか?



「綴喜さまにだけ、特別サービスです」


「ありがとうございます……」


なんだか胡散臭いと思いながら、その場で引越の日時を決めた。


「では、また……当日の朝、ご連絡いたします」


「よろしくお願いします」



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