カットハウスやわた
バイト、始めます
八幡さんは、店のドアにかけてある札を裏返した。


‘‘おやすみ中です’’


‘‘準備中’’でも‘‘close”でもなく ‘‘おやすみ中です”……八幡さんの人柄を表す札だと思った。


「さぁ、どうぞ」


ぼんやりと入口に立つ私に、八幡さんが声をかけた。店に入る前に、札を裏返してみる。


‘‘切ってます”


散髪屋さんだからって、切ってるだけじゃないでしょ!思わずツッコミたくなる札だけれど、分かりやすくてよい……かもしれない。


「綴喜さん?どうかしましたか?」


「あ、いえ……失礼します」


頬を緩めながら店に入り、勧められるまま、椅子に腰をかけた。本棚の隣の、赤い箱が気になった。


しばらくすると、八幡さんがコーヒーを運んできてくれた。コーヒー豆の種類はよくわからないけれど、独特の甘い香りがするコーヒー。


「お待たせしてすみません。業務内容や賃金、労働時間なんかを簡単に説明するだけですから、すぐに終わります」


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