カットハウスやわた
「和洋中、なにがお好みですか?」


「えっ……と、好き嫌いはないので、お任せします」


「では、和食にしましょう」


八幡さんの足は、惣菜屋さんの前で止まった。そして、店員さんに話しかけた。


「こんにちは。上、あいてますか?」


「どうぞ」


上?惣菜屋さんの二階は、普通の部屋のようにみえるけれど?


…と、思っていたら、八幡さんが堂々と惣菜屋さんの奥へ入っていき、さらには狭い階段を上り始めた。私も慌ててうしろに続いた。


二階は、畳の座敷にテーブルが四つあり、イートインできるようになっていた。


「日替わりのお惣菜二品とご飯、味噌汁がついてワンコインで食べられるんです」


「へぇー!安いですね」


「夜、時々来るんです。夜のほうが盛りがいいから」


今日の日替わり惣菜は、切り干し大根の煮物と、照り焼きチキン。それにアジフライのおまけ付き。おまけは売れ残りを出さないための工夫らしい。


「いただきます」


「お米は、地元の物なんですよ」


「そんなにこだわっていて、ワンコインだなんて……」


そう言いながら、ご飯を口にする。やわらかめのお米で、噛むと甘みが出る。


「おいしい!」


「……でしょ?スーパーでは取り扱っていないので、商店街のお米屋さんへ……」


「八幡さんは、商店街の宣伝部長ですか?」


しっかりと味の染みた切り干し大根、皮がパリッパリで綺麗な照りのついたチキン、サクサクのアジフライ…。ふたりで笑いながらご飯を食べる。こんなにおいしい食事は、久しぶりかもしれない。

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