カットハウスやわた
「ごちそうさまでした」


八幡さんにごちそうしてもらった。ぺこりと頭を下げる。


「いいえ。ちょっとお茶でもしますか」


そう言って歩き出す八幡さんに並んで歩いた。小柄で色黒で、どっしりとして懐の深そうな体付き。ギロリとした目で、一瞬ドキリとさせるけれど、話してみると穏やかな口調。


まだ出逢ってそんなに経っていないけれど、もうずいぶん前からの知り合いのような……たとえて言うならば、気のいい従兄弟……みたいな。


「そこの喫茶店は、近所の飲み屋に合わせて夕方から夜中まで営業しているんですよ」


「へぇー、珍しいですね」


赤い屋根の、喫茶店に入った。
カランコロンと、なんだか懐かしい音が響いた。


「いらっしゃい」


白いヒゲを蓄えた渋いマスターが、渋い声で言った。カウンターに座っていた男性が振り向いた。


「あっ、まさやん」


熊野さん!こんなところで会うとは!
八幡さんは、熊野さんの隣に座ろうとした……が……


「綴喜さん」


私の名を呼んで、熊野さんの隣に座るように促した。仕方なく私が熊野さんの隣に座り、私を挟むようにして八幡さんが座った。


「いやぁ、こんなところで真矢に会えるなんて!」


会いたくなかったのに。


「素敵な夜になりそうだ」




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