カットハウスやわた
「お疲れ様でした」


子守りに夢中の私が、八幡さんの声にハッとして、鏡越しの熊野さんを見た。そこに売れない絵描きの姿はなく、まるでバレー部キャプテンのような、爽やかなイケメンが映っていた。


うそっ⁉︎く、熊野さん……。
髪を切っただけで、こんなにもイケメンになるなんてっ‼︎どことなく、正樹に似ている気もするし……。


「あ!お、お疲れ様でした!」


私は、おばさんにお嬢さんを渡すと、慌てて床に散らばった髪をほうきではいて片付けた。


「切り過ぎじゃない?まさやん」


「いや、これくらい切らないと…せっかくのイケメンが台無し」


おっしゃる通り!と、私も首を大きく縦に振った。やっぱりみんな、そう思っていたんだね。


「そう?まぁ、真矢も気にいってくれたようだし、よかった」


気にいった…とは言ってないけれど、売れない絵描きよりは、ずっとずっといい。


「ありがとうございました」


あの、爽やかイケメンな熊野さんなら、誘われてもいいかも?


なぁーんて。



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