カットハウスやわた
「失った恋を探すより、新しい恋を見つめるほうが、いいんじゃない?」


「……」


「……と、言いながら、オレも指輪をつけたままだけど……」


八幡さんのゴツゴツした左手の薬指に、細い指輪がはまっていた。それをみつめながら、恥ずかしそうに笑った。


「今でも、好きですか?」


聞いてはいけないことだと思いながら、つい口にした。別れたくて別れたんじゃないから、嫌いになるわけがない。今はいない女性に、ほんの少し嫉妬している……。


「わからない。もし、今、目の前に現れたら……どちらか気づくのかな?」


ごめんなさい……私は、心でつぶやいた。その時、定休日なのに、カランコロンとドアの開く音がした。


もしかしたら、熊野さんが私を探しに来たのかもしれない。私は、思わず立ち上がった。八幡さんは、ドアの開く音に動じることなく、視線だけをドアに向けた。


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