カットハウスやわた
あれから…
「おはようございます」


翌日、いつものように出勤した。八幡さんは、カレンダーの前で腕組みをして立っていた。私の声は、耳に届いていないらしい……。


「八幡さん!」


うしろから声をかけると、ビクッとして振り返った。


「おはよう……」


無理に笑顔を作ると、スポーツ新聞を手に取った。でも、読む気はないらしい。


「新聞、逆ですよ!」


「あ、ああ!」


逆さに見ていた新聞を、慌ててひっくり返す。冷静を装っていたけれど、別居中の奥さんが突然帰ってきたのだから、心を乱されるのも無理ない。


「掃除、してきまーす」


エプロンをして表に出ると、接骨院の息子が出てきた。これから、窓拭きをするらしい。


「おはようございます」


「おはよう、真矢ちゃん!昨日は、どうしたの?バーベキュー、来なかったけど?」


「あ!ああ……お腹の具合が……ははっ」


「大丈夫⁉︎もしかして、女の子の日だったの?」


余計なお世話だよ!と思いながら、はははと愛想笑いを浮かべた。


「八幡さんも来なかったけど、それは偶然⁉︎」


「え?あ、そうなんですか?」


昨日、一緒にいたとは言えず、素知らぬ顔をした。


「単なる二日酔いみたいだけど。今朝は元気でしょ⁉︎」


「ええ、まぁ……」

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