カットハウスやわた
「腹が減った。真矢は、なにか食べた?」


私が首を振ると、メニュー表を広げてくれた。そこで正樹はやっと汗を拭った。


「オレ、ナポリタンとアイスコーヒー」


水を出してくれた奥様に、突然、注文をする正樹。まだ決めていないのに……と思いながら、私もナポリタンを……と言った。


「真矢、オレはやり直したい」


正樹は水を一気に飲み干すと、真顔でそう言った。


「今までずっと、真矢に甘えてた。オレが浮気しても、黙ってそばにいてくれたから」


そう。正樹の浮気は、何度かあった。でも、その場限りだったり、食事に行く程度だったから、許していたのだ。


「でも、今回は……許せない。友達だったから、余計に」


「ごめん。魔がさしただけだよ。今は、誰とも付き合っていないし、真矢が好きなんだ」


ホントなのかな?なんだか、信用できない。


「それならば、聞くけれど」


注文していたナポリタンが運ばれてきた。正樹は、フォークを手に取ると、なにも言わずに食べ始めた。


「私の……どこが好きなの?」


正樹は、ナポリタンのソースで口を汚しながら「全部」と言った。



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