カットハウスやわた
「オレは、田舎の散髪屋の店主で、他に取り柄もない、バツイチの男だ。そんな男が、綴喜さんの人生に口だしは……」


「やり直して、いいですか?」


私は八幡さんに被せるように、強い口調で言った。八幡さんが『いいよ』と言えば、やり直すつもりでいた。


一瞬、八幡さんの唇が……動いた。お互いみつめ合ったまま、動けない。先に目を逸らしたのは、八幡さんのほうだった。


「やっぱり、ダメだ」


そうつぶやくと、足で踏むと上下する椅子にドサッと身を委ねた。鏡に映る自分から目を逸らすように天井をみつめる。


「オレは、髪の綺麗な女性に弱い」


そういえば麗奈さんも、綺麗な髪をしていたな、と思った。


「麗奈さんが出ていって、心にぽっかりと穴が開いていた。そんな時に、綴喜さんと出逢ってしまった……」





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