痛くしないで!【短】
だから嫌だ
私の名前を呼ぶ声がして、
私は手汗がにじんだ手で白いがっちりとしたドアを開けた。
ふわんと漂う独特な匂い。
私はこの匂いが大嫌いだ。
ドアを開けた先にいたのは五十代くらいのおじさん。
にこやかな笑顔が特徴的だ。
「やあ」なんて言って、私を目の前に座らせる。
言われたとおり、私はおじさんの正面のシンプルな椅子に座った。
キイと高い音が少し鳴った。
ドキドキして、ヒヤヒヤして、
“これから何をされるんだろう”という
答えが出きっていることを考える。
このおじさんに馴れ馴れしく触られて
“奥まで入った”時には
言葉では言い表せないほどの痛みが走る。
「もうちょっとだから」とか言って、
とてつもない量の“液体”を私の中に出す。
込み上げてくる涙を我慢して、
私はその痛みに耐えるしかないのだ。
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