甘い甘い体
「こんな夜遅くに一人で居ることが問題。その上、嘘ついて出てきて・・・・
なんかあったらどうすんの?俺んちの前でも、俺居なかったら・・・・守れないじゃん。」
最後の方の辛そうな優君の声を聞いて、自分の行動が間違ってたんだって気付いた。
「ごめんなさい・・・」
優君は私の左手にある時計を触る。
「・・・・・?」
「これでいい。」
優君の手が離れた腕時計は11時を指していた。
「みんなと同じ日にチョコもらわなくてもいい。俺とひなのバレンタインは今、この時計は14日の夜11時。コレでいいじゃん。
だから夜に一人で出るとかもうやめて?会いたくなったら電話して?何してても、どこにいても、俺、会いに行くから・・・・」
時計に向けていた視線を優君に移す。
優君は本当に悲しそうな笑顔だった。
どれほど心配させていたのかが思い知らされる。
「会いたかったの・・・・今日。ホントはすっごく会いたかった。
優君のこと思いながらチョコ用意してると、すっごく会いたくなって・・・・お母さんに嘘ついちゃった・・・」
私は優君に抱きついた。
今日は女の子が素直になれる日。
いつも思ってること、恥ずかしくて言えない事・・・言わなきゃ・・・・
「もっと一緒に居たい。もっと優君のこと知りたい・・・もっと・・・・・私の事好きになってほしい。優君のこと大好きだからっ・・」
背中に回した手で優君のセーターをギュッと握る。
何も言わない優君。
なんで黙ってるの?
重かった?
こんなに思って・・・私の気持ち・・・・重いって思ったのかな・・・
「はぁ~・・・・」
不安な気持ちが広がった時、大げさなぐらい大きな優君のため息が聞こえた。
「反則だし・・・」
ボソっと耳の傍で聞こえた声。
反則?何が?
体を少し離すと赤い顔した優君と目が合った。
困ったような優君の顔。
私は首をかしげた。