甘い甘い体



俺は心を落ち着かせる。


勘違いだかなんだかわかんねーけど、俺が泣かせたことには違いない。


なるべく優しい声で。



「ひな?開けて?」


ドアに近づいて声をかける。


「ダメ・・・」


鼻をすすりながらしゃべるひな。


「お願い。開けて?」


もう一度、声をかける


すると、ゆっくりドアが開いた。


ほっと胸をなでおろす。



部屋に入るとすぐ俺に背を向けるひな。



方が小さく揺れて鼻をすする。




「なんで泣いてんの?」


俺の問いかけに沈黙を続けるひな。


「なんで着替えんの?」



似合ってる。もっと見たい。これが本音。



でも・・・んなこと言えるかっつの。


肩を小さくあげたひなが



「だ、だって・・・・似合わないしっ・・・」


小さく呟いた。


「へ?」


考えても見ない理由にマヌケな声が出る。


「誰かに言われたの?」


俺の問いかけに大きく首を横に振る。


?じゃ、なんで?



「似合ってるのに・・・」


ポロっと本音が出た。


え?俺、今、なんっつった???


自分で自分の発言にびっくりする。


今更遅いけど手で口を押さえる。


「うそだ・・・」


今にも消えそうなぐらい小さな声で、ひなが肩を震わせて言う。


また泣き出した・・・?


「嘘じゃねーし・・」


発言は意図的なものじゃないけど、嘘じゃない。


「うそだよ・・」


なんでだろう。つかみどころはわかんないけど、たまにこう頑固なひなになる。


「うそじゃないって。」


俺はひなの肩に手を掛けて、ひなを振り向かせる。




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