甘い甘い体


仁君と約束の土曜日。


前言ってた、智くんが良く行くお店に連れてってくれるって。


初めて行く場所だし、隠れたようなところにある店だから


『絢乃迷子になりそうだしな』って仁君が・・・


反論できないところが悲しいけどね。


駅で仁君を待つ。


仁君と二人でどこかに行くのは初めてかもしれない。


駅前にはたくさんの人。


カップルが多くて、みんな待ち合わせみたい。


15時でも12月は寒い。


智くんと待ち合わせするときは、智くんはいつも5分前には来てくれる。


冬だし、私が寒い思いしないようにって。


優しい智くん。


でもきっと優しいのは私にだけじゃないのかな。





「ごめん、待った?」


人ごみの中から仁君が私の前に来た。


背が高くて、お洒落で、カッコよくて。


仁君ってすごいよね。


なんか改めて思う。


「何?顔、なんか付いてる?」


自分のほっぺを触りながら言う仁君。


「ううん」


私は小さく首を横に振る。


「そ?んじゃ、行くか」


そう言って仁君は私に背を向けて駅へ歩き出した。




智くんならここで手をつないでくれるんだ。


『さみーなぁ、絢乃ちゃんの手、温かい』って言いながら・・・・


私は自分の手のひらを見つめる。


着いてこないことを不思議に思った仁君が振り返る。


「なに?手ぇつないでほしい?」


クスクス笑いながら言う。


「違うっ・・・なんでもないっ」


小走りで仁君に追いついた。

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