甘い甘い体
「ほら、絢乃、こっち。」
仁君に手を引かれてカウンターに座る。
さっきの声のした方向を見ると、薄いサングラスにあごヒゲの男の人がカウンターの中からニコニコ笑ってこっちを見ていた。
うぅ・・なんか怖そう・・・苦手だ・・・・
「なに?ついに仁にも彼女が出来た?」
「ヒロさん、からかわないで、この子そういう冗談通じないから。」
「なに?本命?」
「だといいけどね。」
「違うの?」
「残念でした。そんなんじゃねーの」
「なーんだ、残念」
ヒロさんと呼ばれた男性は私におしぼりを差し出し。
「仁君にだまされないようにね。かわいい顔してるけど、極悪人だよ?」
そう言って、どこかに行ってしまった。
あっけに取られる私をみてクスクス笑った仁君
「あの人、冗談ばっかりだから。気にすんなよ。」
極悪人って・・・・
そういえば、仁君って彼女は不特定多数って言ってたっけ?
同じ学校の女の子には手を出さない主義だとも聞いたことあるかも。
私の知らない仁君を知ってる人なのかな・・
ちょっと興味があるけど、知らない方がいいかも。
そんなことより、さっきから後ろでダーツをしてる智くんが気になる。
結構広い店内だし、薄暗くて、BGMも大きいから、私が居ることには気付いてないんだろうな・・・
私が知らない智くん。
ダーツをしながら無邪気に笑ってる。
私と一緒に居るときは落ち着いてて、とても高校生には見えないから。
「はい、青森産、お取り寄せリンゴジュース!超うまいよ」
差し出されたのはシャンパングラスに入ったリンゴジュース。
仁君を見るといつものようにブラックコーヒー。
「え・・私、何も注文してないよ・・・?」
「うん、勝手に頼んだ。絢乃リンゴ好きでしょ?」
「うん・・・・」