家出少女と風花寮

勉強会と恋

翌朝。

青木君は腕痛腰痛筋肉痛に悩まされていた。

「大丈夫ですか……?」

「インドア派の筋力なめないでいただきたい!」

口ではこう言って、箸を持つのすら辛そうだ。
ご飯茶碗なんて以ての外。
腕を上げるのすら辛そうである。
大家さんがそっとスプーンを用意しているのが見えた。

青木君がそうなった原因は想像できてる。
そうは思いたくないけど……私を運んだせい、ですよね。
自業自得とはいえ、原因の一端を担う身としてはショックではある。
身体を痛めるほどに重かったのかと。

「でも、すぐに筋肉痛になるのは若い証だよ」

と、私なりにフォローした。

「同じ歳のくせに何年寄りみたいなこと言ってるんですか」

ごもっともで。

「そうあたるな。ほら、服脱げ。湿布貼ってやる」

北山君が、常備されている救急箱を持って来た。

「ああん。そういうのは僕ではなく浮気症チャラ男にお願いします!」

身体をくねらせ、悶える青木君。
そしてすぐ、筋肉痛の痛みに悶える。

この期に及んで……。

「何言ってんだ。あんた以外に湿布が必要な奴がいるのか?」

真面目に返す北山君がかわいそうに思えてきた。
こんな状態の青木君には何を言っても無駄ですよ、と教えてあげたい。
そして青木君は、痛いのか萌なのかわからない悶えかたをしていた。
きっと両方なんでしょうけど。

「しゃーねーなー」

北山君は青木君を抑えつけ、彼の制服を剥いでいく。

「いやぁん!」

「おとなしくしろ。すぐに済む」

「ああんっ!」

「変な声出すな」

「だって、くすぐったいんだよ、っ! ひゃぁっ!」

いつもは食事中騒ぐと怒る大家さんも、今回ばかりは見逃してくれるようだ。
微笑んで青木君が組み敷かれる様を見ていた。

「きゃぁん」

1枚。

「ああぁん!」

また1枚と背中に貼られるたび、嬌声が響く。
その近くでご飯を食べているわけだが、気まずい。

「っああぁぁん!!」

一際大きく鳴いて、青木君は沈んだ。
貼り終わったらしい北山君が、満足そうに彼を解放する。

自身の身体に青木君を凭せかけ、手ずから脱がせた制服を着せる。
最後に乱れた髪を整えてやった。

終わりとばかりに北山君が手を離すと、青木君はよろよろとわたしの元に来て。
背中から首元に顔を埋められた。

「青木君、ちょっ……」

「ううっ………」

すぐ横には、青木君の頭。
彼は涙なく泣いていた。
心から血の涙を流して。

「僕じゃ萌えないんだ………」

………まだ言うか。
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